羽毛布団の定義

我が国における羽毛布団の普及率は100%を上回っているそうなので、
きっと皆さんも掛布団には羽毛を使われていることでしょう。

さて、その羽毛布団を名乗るには、
定義があるということをご存じでしょうか。

布団屋では常識ですが、
一般にはあまり知られていないかもしれません。

布団に使用される羽毛というのは、グースやダックなどの鳥の毛で、
丸っこい感じのダウンと、いわゆる羽根であるフェザーとに大別されます。

このダウンが中わたの50%以上のものを「羽毛布団」と呼ぶことができ、
ダウン50%未満(フェザーが50%以上)のものを「羽根布団」といいます。
これはJIS規格により定められています。

しかし現在は選別技術も非常に高く、
ダウン90%以上が当たり前といっても過言ではありません。

ダウン90%だから質が高いというわけではありませんが、
80%や70%のものを態々選ぶ必要はないでしょう。

安い製品をよく見てください。
ダウン80%、70%、もちろんギリギリの50%というものも存在します。

とくにネットショップやテレビ通販では、
組成の表示を重視せず、小さく書かれているので、注意が必要なわけですが、そもそも何でもかんでもそういった店で買おうとすること自体に問題があるといえますね。

松井重樹

枕に関する相談は最も多いですが、
私が最も売らない商品は枕です。

枕の相談の場合、そのほとんどが、
起床時の肩や首の痛み、頭痛、吐き気で
悩まれています。

そして必ずといっていいぐらい
くいしばりの症状があり、
マウスピースを持っています。

そのくいしばりが、
起床時の症状を起こしているのです。

枕を作っても症状は変わりません。
だからその悩みを打ち明けられた時点で、
枕を売りたくありません。

また、マウスピースは歯を保護しているだけであって
くいしばりの症状を解決するものではありません。

根本的に解決するには、
何故くいしばりをしているのか?
ということを考える必要があります。

そこには、あなたの生活習慣や、
精神状態が関わっています。

マウスピースを作るだけで、
根本原因に着目しない歯医者に通う意味はないと私は考えます。

そして、誰かに治してもらったり、
何かを使ったら治るという思考ではなく、
全ては自分自身の問題と捉えることが
できるかどうかが非常に重要です。

松井重樹

敷布団やベッドのサイズ

布団やベッドにはシングルやダブルなど、サイズ名というものがあるわけですが、実際にその寸法が何cmなのか、あなたはご存じでしょうか?

ダブルはシングル2枚分と思っていたり、
セミダブルを2人で使っていたり、
という話は布団屋をやっていればよく耳にする話です。

ここにも買い方、売り方の問題が表れていますね。

では、実際に寸法をご覧ください。

【敷布団やベッドのサイズ名と寸法】
シングル 100×200(cm)
セミダブル 120×200(cm)
ダブル 140×200(cm)
クイーン 160×200(cm)
キング 180×200(cm)

ベビー 70×120(cm)

おわかりいただけただろうか。

皆さんがよく2人で寝ているダブルサイズというのは、幅が140cm。
一人の幅は70cmしかありません。
70cmというのは赤ちゃん用の敷布団と同じ幅です。
そのためダブルサイズは、大人二人がゆったり寝るには、少し狭いといえます。
とくにベッドでは、身体が落ちないように寝る必要があるため、有効な広さは更に狭くなるのです。

クイーンサイズは二人で使うと一人80cm。
キングサイズは一人90cmです。
売り場で見ると広いように思うかもしれませんが、二人で使うと、実際にはシングルより狭くなるんです。
広く使いたいなら一人に一枚シングルの布団。一人に一台シングルのベッドを用意する方が、ゆったり使うことができます。

クイーンやキングというサイズは、その名の通り、
女王や王のように一人で広々と贅沢に寝るというのが本来なのかもしれませんね。

松井重樹

なぜウレタンマットは駄目なのか

寝具の素材として、私が最もおすすめしないものはウレタンフォームです。
ウレタンマットレスだけでなく、殆どのベッド用スプリングコイルマットの上層にもウレタンフォームは使用されています。
ウレタンマットは「体圧分散」「S字カーブを維持」といった謳い文句で売られていますが、本来寝具に必要な吸湿性などについて触れられることはありません。

ウレタンは汗を吸わないだけでなく、断熱材として使われるぐらい通気性が悪いため、最も蒸れる素材といえます。
穴を開けたり表面を加工したりすることで通気を良くしているそうですが、その加工自体がウレタンは蒸れるということを表しています。
穴の開いた和布団や、波状の羊毛布団が存在しないのは、その必要がないからです。

また、ウレタンフォームの主原料であるイソシアネートは、微量でも吸入や接触すると有毒な物質です。イソシアネートの健康被害は欧米を中心に50年以上前から問題視されています。
一度形成されたウレタンは安定しており、イソシアネートに曝露することはないといわれていますが、劣化と共にイソシアネートが発生するという可能性も考慮しなくてはなりません。

補助的に合成繊維を使用するにしても、素材の選択肢は他にもあります。
蒸れる上に、有毒物質発生の疑いのある素材の寝具を、態々買ってまで使う理由があるのでしょうか。

松井重樹

子供の布団

殆どの子供が合成繊維の寝具の上に寝ていることは間違いありません。
説明書きに「オーガニックコットン使用」と書いてあっても、表面の生地や付属のカバーだけが綿100%で、中身はポリエステルやウレタンという製品ばかりです。

沢山の汗をかく子供にとって、汗を吸わない合成繊維の寝具はとても不快な睡眠環境です。
子供が布団から飛び出して畳の上に寝ていたり、布団を蹴ったりすることはありませんか。
寝相の悪さは、合成繊維の蒸れから逃れようとしているのかもしれません。

吸湿・保温できない寝具による睡眠時の冷えは、おねしょをしてしまう要因にもなります。
不快さから睡眠の質が悪くなり、排尿せずに眠るための抗利尿ホルモンの分泌に影響を及ぼしている可能性も考えられます。

市販のベビー布団セット等に必ず付いているおねしょシーツは、布団を汚さないためのものですが、これも蒸れる原因の一つです。
子供関連の便利グッズの多くは、子供にとっての快適さや本来求められる機能を無視し、親が楽をすることや管理のしやすさばかり意識して作られているのです。

また赤ちゃんに関しては、寝姿勢も睡眠に大きく関わっています。
赤ちゃんはお母さんのお腹の中で丸い姿勢をとっており、背骨は大人と違ってC字カーブを描いています。
このCカーブは生まれてからも同じで、Cカーブを保ち丸く包むように寝かせてあげると赤ちゃんの身体に負担がなく、リラックスしてグッスリ眠ることができるのです。
これは寝るときだけではなく、抱くときも同じですが、街では縦抱きの抱っこ紐を使っている人しか見かけません。

苦しい姿勢な上に、布団の素材が不快な合成繊維であれば、布団に降ろされた瞬間に赤ちゃんが泣いてしまっても当然といえます。
何でも「背中スイッチ」と諦める前に、できることがあるのではないでしょうか。

松井重樹

お金を出しても買えない

あなたが寝具の固さや柔らかさに囚われている限り、
お金を出しても良い敷布団に辿り着くことはできません。

試しにあなたの知っている有名寝具や一流寝具、
高級寝具の名前を挙げてみてください。

それらは必ず
「体圧分散」
「身体を支える」
「S字カーブを維持」
といった言葉が使われ、
必ず汗を吸わない合成繊維で作られています。

オーダーメイドだろうが何だろうが同じです。

細かい違いはあっても、
組成だけで見ると、
量販店で売られている安物と何も変わりません。

身体を支えるだけの安い素材を用意し、
有名人やネット広告を巧みに使い、
広告費を上乗せして高く売る。

そんな寝具ばかりです。

松井重樹

買い手として

容易に想像がつくと思いますが、
いま布団屋の数はどんどん減っています。

布団職人の国家資格である
「寝具製作技能士」の技能検定試験もまた、
廃止寸前に追い込まれています。

それだけ誰も布団に興味がないし、
布団では食っていけないということです。

かつて木綿布団は広く普及していましたが、
時代が進むにつれ消費者は安さや便利さだけを求め、
布団屋はそれに乗じ、合成繊維の寝具が普及しました。

横になれたら何でも良い手軽なものが溢れ、
寝具の質のことなど誰も気にしなくなったのです。

その結果、消費者が眠れなくなること、
量販店が栄え布団屋が廃業に追い込まれることは、
どちらも自業自得です。

寝具業界に限らず、他の業界でも同じことが
起こっているのではないでしょうか。

売り手は売れるものを売るので、
買い手から変わっていく必要があります。

自分がこだわり抜いたものを広めたいのであれば、
まずは自分が逆の立場であるときに、
無頓着であってはなりません。

そうでなければ、
どんなこだわり布団店の店主も、
量販店で安い合繊の布団を買う客と同じということですから。

松井重樹

99%の日本人

私の目標は天然繊維の敷布団使用率を
10%まで引き上げることです。

天然繊維の掛布団である羽毛布団の普及率は
極めて高い数字のため、
「敷布団」というのが重要なポイントです。

数年前、寝具専門店で寝具を購入する人の割合は
日本国民の約3%という数字が業界紙に掲載されました。

どこからが専門店なのかはっきりしませんし、
その寝具専門店と称される店ですら、
ホームセンターや量販店と同じような素材の
寝具を販売しています。

だから私は99%の日本人が
合成繊維の敷寝具の上に寝ていると考えているのです。

身体を支えるだけであれば合成繊維でも良いでしょう。

しかし実際に布団求められる機能は
ただ身体を支えることだけではありません。

あなたは「あの敷寝具が良い、この敷寝具が良い」という論争が、
全て合成繊維の比較でおこなわれているということにお気づきでしょうか。

あなたはどんな布団の上に寝ていますか。

松井重樹

寝具の機能

寝具に求められる重要な機能は
「吸湿(汗を吸うこと)」と
「保温」することです。この条件を満たすためには、
「天然繊維」を使用する必要があります。

汗を吸わない合成繊維の寝具を使用すれば、
寝具と身体との間の湿度が高くなり過ぎます。

湿度の高まりは不快感を生み、余計な寝返りが増え、
睡眠の質が悪くなる原因の一つとなります。

とくに発汗が多くなる背中側(敷寝具)が重要です。

保温とは単純に、この機能がないと
冬場に寒くて眠れないと考えていただければ、
わかりやすいと思います。

多くの方が、寒いときは掛布団を
沢山掛ければよいと考えますが、
実はこちらもまた敷寝具による
保温というのが重要です。

掛布団を何枚掛けようが、
敷寝具がスカスカの合成繊維や
スプリングマットだけでは、
下へどんどん熱が逃げていってしまうため、
暖かく眠ることはできません。

逆をいうと敷寝具が整えば、
上から沢山掛ける必要もなくなるということです。

一般的には敷寝具の固さや柔らかさ、
枕、掛布団などに焦点を当て、
それらがまるで最も重要であるかのように
謳われています。

決して吸湿や保温、
敷寝具の素材のことについては触れられません。

とくに「○圧分散」「○反発」という言葉には
気をつけた方が良いかもしれませんw

吸湿や保温に優れた寝具というのは、
決して特別なものではありません。

現代人の布団が異常というだけです。

人類がウレタンやポリエステルの上に寝始めて、
一体何年が経ったというのでしょうか。

松井重樹